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Column:企業再生における当事務所の考え方
企業の再生。これをひとことで言えば、赤字の会社を黒字にすることです。当然、簡単な仕事ではありませんし、私たちの力だけで、すべてのお客様を再生できるわけでもありません。次の事例を通じて、再生とはどのようなことか、その中でどのように私たちがお役に立てるかをご紹介したいと思います。
ある銀行からの依頼
ある日、銀行の担当者から電話が入りました。「先生のところは、経営のアドバイスをするのですよね? 2回目のリスケを申し込んできた会社があるのですが、先生、見てあげてくれませんか?」
“2回目のリスケジュールを申し込んできた会社”とはすなわち、借りたお金を約束どおりに返済できず、返済を先延ばしにしたいと申し出た会社を意味しています。銀行担当者からの電話を私たちなりに翻訳すれば、「赤字、もしかすると倒産寸前(?)である会社の顧問を引き受けて、黒字に導き、銀行へ滞りなく返済できるよう、指導してほしい」という話に。
連絡先を銀行の担当者からお聞きした私は、すぐにその会社を訪問しました。その日は簡単な顔合わせで済ませ、まずは会計資料をお預かり。事務所に戻ってスタッフに数字を入力してもらい、経営状況をざっくり分析していくと…、そこには、「うーん、これは首の皮一枚(!?)」という数字が並んでいました。悩んだ末に、「これは会社倒産を考えていくべきだ」と判断。その分析結果を伝えるために再訪問し、社長さんと面談しました。
「社長、事業に失敗しても人生は終わりじゃありません。そのためにも、余裕のある終わり方をしないといけません。早速、準備に入りましょう」
そう告げると、社長様はじっくりと考えを巡らせた後、口を開き、こうお話されました。「先生、俺はこの事業に命を懸けてる。どんなことでもしますから、この事業が続けられるようにしてほしい」
事業を営む方は、皆さんいつも命懸けで真剣勝負をなさっている。この仕事を20年行なってきた私も、その気持ちが痛いほど分かります。しかし、状況は本当に厳しいものでした。
「社長、本当に、何でもするんですね? 厳しいですよ。それに必ず成功するとはお約束できかねます。失敗しても責任はとれません。それでも、アドバイスどおりにしていただけますか?」と覚悟を決めてお伝えすると、社長様の答えはYES。その日から、この企業の再生に向けて、会計データを駆使したアドバイスを行なっていくことになったのです。
「仕入価格が同業他社に比べて高すぎます。原価率48%を30%まで下げないと。その工夫を考えてください」などと、会計データを武器に次々とアドバイスしていきます。厳しいこともいいましたが、社長様には「そんな風にアドバイスしてくれた税理士はいないよ。もっと早く先生にお世話になっていればよかった。今までの税理士は、決算書の読み方も教えてはくれなかった」とおっしゃっていただきました。そして、社長様も文字通り「命懸け」で、アドバイス実行のために努力を重ねていきます。見ていた私たちも頭が下がるくらい、ひたむきに件名に努力されていきました。
その会社がその後、どうなったと思いますか? もちろん、今でもご健勝です。私たちがアドバイスを始めてから半年で単月の黒字化に成功。その後、少しずつではありますが、累積した赤字を埋めていき、翌年には黒字決算を達成。もちろん、借入金もお約束どおりの期日で返済されました。
「あの頃の先生は怖かったよ。来るたびに次は何を言われるのかびくびくしていた」と、社長様は笑いながら当時を振り返ります。「何をどう頑張ったら良いのかわからなくて焦っていたけど、先生に説明を受けて、やるべきことが明確になったわ」と、奥様が付け加えます。私が「このままいけば、あと3年で借金は返済できてしまいますよ」と、報告に伺った日のことでした。お二人から、「先生のおかげ」と感謝の言葉をいただき光栄ですが、実際には私たちのおかげなどではありません。状況を好転させた理由、それは社長様と奥様が、文字通り命がけで事業再建に取り組まれことに尽きると言えます。
ならば、私たちは一体何のお手伝いしたのでしょうか。私たちがしたお手伝い、それは、会計を通じて改善すべき点を具体的に数字で指摘していったこと。ただそれだけといえます。
しかし、その数字こそが、真っ暗闇のなかでどちらへ進んだら良いのかわからず、苦悩しておられた社長様の足元を照らしたこともまた事実。会計には経営に必要な情報が沢山詰まっています。なのに、その使い方を知らない社長様がほとんど。私は生涯を通じてこの啓発に努めたい。お二人の笑顔を見ながら、私たちは決意を新たにするのでした。
※企業再生のお手伝いは、銀行様からのご紹介または、事前審査が必要です。状況によっては、お受けできないこともございます。予めご了承下さい。